幸せとは何か。人生100年時代を生き抜くメソッド
「あなたが思う、幸せとは何ですか?」
何だか漠然としていて、答えづらい質問かもしれません。しかし、幸せの実体について考えたことがある人はたくさんいらっしゃるはず。なぜなら、誰もがそれを願うのに、そのカタチは人によって異なり、正解がないからです。
私の場合、おいしいものをいただいたとき、幸せだなぁと感じることがあります。若い頃の私は食べものに対する好奇心が強く、格付けガイドに掲載されるレストランに行くことが楽しみのひとつでしたが、そんなマイブームは数年で終わりを迎えます。田舎に住む両親の質素な食生活を思うと、豪華ディナーに浮かれる自分が情けなくなってしまったのです。
ある時、心を入れ替えて親孝行をしたいと考えましたが、年老いた親には人生を楽しむための気力が残っていませんでした。思いつく限りさまざまなことを提案しましたが、やらない言い訳が返ってくるばかり。健康を取り戻すことに消極的な態度の親に対し、私は苛立ちを募らせました。
老いゆく両親を元気にする方法はどこにある? 頭を抱えながら情報収集していたところ、副学長の佐藤さんがジェロントロジーという学問のことを教えてくれました。
人生100年。長い人生をつらく受けとめなくてはならなくなる前に、学び直して愉快に生きよう。人生やり直しはできないけれど、学び直しはいつでもできるのだから。
幸せ=“大切な人の笑顔を見られること”と説くのが、この大学校の提唱する「ジェロントロジー」です。大切な人の笑顔? 綺麗事のようにも思いましたが、どうやら科学的エビデンスに基づいた話でもあるようです。学問なので座学はあるけれど小難しいことではなく、むしろ捧腹絶倒。こんなに笑ったのは、本当に久しぶりでした。
講座の参加者は、私より少し年上の方たちが多く、驚くほどエネルギッシュ。ピンク・イエロー・パープル!花のようなドレスやスーツに身を包み、キラキラと輝く笑顔が溢れていました。なかには70歳を過ぎてチアリーディングを始めた方までいらっしゃる。私の母はサルコペニアで立ち上がるのすらおぼつかないのに。
そんな皆さんと講座を受けながら大笑いしているとき、幸せになるために必要不可欠なものに気づきました。それは、やはり「笑顔」なのです。
大切な人が笑顔だと自分も嬉しい。ですが、自分も誰かの大切な存在であることは忘れてしまいがち。単純なようで、実は一番大切なことかもしれません。
自分がいつまでも朗らかに生きることは、自分自身のためだけではなく、大切な人の笑顔のためでもあるのです。
伊藤 璃帆子
コラムニスト・写真家・料理家
WEBを中心にコンテンツの企画制作に携わりながら、料理家としても活動中。隠れ家割烹「吉祥寺わるつ」と共同でケータリングユニット「SESSION」を運営。